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★★ 『ワイルド・バレット』

2006年。ドイツ/アメリカ。"RUNNING SCARED".






  ウェイン・クラマー監督。






 クエンティン・タランティーノ絶賛、という宣伝コピーは、もう時期はずれのような気がする。少なくない数の人が、「ふん、そういう映画にはもうウンザリしているんだよ!ちょっとは時代の空気を読め!」と考えて、見ようとも思わなくなる、というマイナス効果しかもたらさないのではないだろうか。













 映画は実際にタランティーノ監督が喜びそうな、へなちょこ演出の、オタクの臭いが濃厚な作品だったので、仕方がないが、






 ガイ・リッチーの『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』などが最高に面白かった人には、同じように最高に楽しい映画にはなっている、と思われた。






 この数年のこの類のへなちょこアクション映画(『アドレナリン』






や、『相棒/シティ・オブ・バイオレンス』






や、『カクタス・ジャック』






や、『シューテム・アップ』






や、『スネーク・フライト』






や、『すべてはその朝始まった』






や、『スモーキン・エース』






や、『ビッグ・トラブル』






や、『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』






や、『ラッキーナンバー7』






や、『リボルバー』






や、『レイヤー・ケーキ』






や、『unknown/アンノウン』






や、『11:14』






や、『13/ザメッティ』






など、その他多数。)






 などと比較して、この映画がすぐれているかというと、似たり寄ったりの出来で、特にすぐれてはいない。






 (少なくとも、『相棒/シティ・オブ・バイオレンス』や、『ホット・ファズ』よりは劣る。)













 が、オープニングで結末が予想できてしまう、ということはあったが、出演俳優のキャスティングの面白さもあって、ありふれた潜入捜査官ものの物語ながら、ふざけた展開と、「俺はこういう映画が作りたかったんだよ!」という魂の叫びが聞こえるような、熱意が感じられる画面作りで、かなり楽しい映画にはなっていた。(これを楽しいと思う人は少数派に属する哀れな人間だという自覚はある。)













 ポール・ウォーカーを筆頭に、この先には明るい未来が待っている可能性は少なそうな、崖っぷち俳優が総出演といった感じで、(大物俳優チャズ・パルミンテリは例外だが)、せっぱ詰まった雰囲気が増幅されているような印象もあって、面白かった。






    IMDb






          公式サイト(日本)



























 2009年全米公開予定(日本公開は未定)の『ワイルド・スピード』シリーズの新作にちょっと期待がかかるポール・ウォーカー。私生活でもナイスガイらしいので、細く長く生き延びるタイプかも知れない。






 イタリア系マフィアの使い走りみたいなことをやらされているジョーイは、ある日、警察官による強盗団を射殺した拳銃を処分するようボスの息子トミーから依頼される。というところから物語が始まる。




















 ジョーイの妻テレサは『ディパーテッド』でマット・デイモンとディカプリオとの間で揺れ動く女医を演じて、一瞬だけ脚光を浴びたヴェラ・ファーミガが演じる。早くもB級映画に落ちぶれたか、と思ったら、いろいろ今後の出演作の予定はあるみたいだった。






 出演者のほとんど全員に拳銃を撃つシーンがある、というのも珍しいことのような気がした。




















 悪徳刑事ライデルを演じるチャズ・パルミンテリ。ど派手で間抜けな死に方が面白かった。






 人脈の豊かな人らしいが、この悪人顔で、『NOEL ノエルー星降る夜の奇跡』






を作った、というギャップはすごい。




















 『サンキュー・スモーキング』






や、『記憶の棘』






での天才的な演技力で注目を集めたキャメロン・ブライト少年も15歳とむずかしい年齢になってきた。






 濡れた瞳がゲイの男性に大人気らしいが、『ホーム・アローン』のあの少年みたいになるのではないか、という不安もある。






 映画はC・ブライト演じるオレグ少年がジョーイの預かったピストルをこっそり持ち出して、DVの父親を撃ってしまったことから大変な事態になる。





















 オープニングから低予算ながら、殺伐とした派手な銃撃戦で始まり、つかみはバッチリだった。







 10分に1回くらいは撃ち合いのシーンだったような印象がある。




















 出てくる人間は極悪な人物ばかりだが、ガイ・リッチーの映画とは多少違って、きちんとキャラクターを細かいエピソードの積み重ねで描いてあったように見えた。(気のせいかも知れない。)






 もっとも極悪な人物は現在の日本で問題になっている事態にも通じるような恐怖のカップルだった。一瞬、『闇の子供たち』






を連想させられた。




















 クライマックスはアイスホッケーのリンク上での『レザボア・ドッグス』風の、アナーキーな撃ち合いになる。






 スケートリンク上での銃撃戦はジョン・ウー監督の香港ノワールで見た記憶があるが、あのすさまじさには遠く及ばなかった。が、そこそこに盛り上がりを見せる。




















 レンタル店のDVDスルーでこの映画を発見して見ていたら、かなり得した気分にはなっただろう、と思った。






 ただし、来年の今頃には見たこと自体を忘れている可能性が高い。



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